民法(相続法)の改正で見直された「遺留分制度」について

2018年に民法(相続法)が改正され、いくつか制度が新設・改正されました。
その中で、今回は「遺留分制度の見直し」について解説していきます。
遺留分とは
遺留分とは、法定相続人のうち、配偶者、子、直系尊属のみに認められている相続分の最低保証枠のことです。
相続では、遺言書に示されている被相続人の遺志が基本的には尊重されます。
例えば、子どもが複数いる場合に一人の子どもに全財産を相続させることもできます。このような場合、被相続人の遺志を尊重するのが基本ですが、納得できない場合には遺産分割協議を行い、別途話し合いを行うことができます。
ただし、遺産分割協議は相続人全員の合意がないと進めたり協議を成立させることができません。
そのような場合、遺留分権利者は「遺留分減殺請求権」を行使することで最低保証枠の相続財産を確保することができます。
遺留分権利者全員に割り当てられる遺留分全体枠を総体的遺留分、遺留分権利者個人に割り当てられる枠を個別的遺留分と言います。
総体的遺留分は、直系尊属(故人の親世代)のみが相続人の場合は基礎財産の1/3、それ以外の場合は基礎財産の1/2が割り当てられます。
個別的遺留分は、総体的遺留分に法定相続分の割合をかけて算出します。
遺留分制度の改正
遺留分制度が改正されたことにより、大きな変更点は、遺留分の請求が金銭債権に一本化されたことです。
例えば、ある被相続人に相続人となる息子と娘がいたとします。
遺言状で「息子に土地と建物を相続し、娘に預貯金を相続する」と記していたとします。この時、娘が預貯金額が建物の評価額に比べて少ないと考え、遺留分減殺請求権を行使しました。
この場合、従来ですと息子の相続した土地と建物を共有状態にすることができました。遺留分減殺請求権が認められると、息子は土地と建物の一部を娘に渡すか、売却して現金を分ける必要がありました。
これまでの問題は、土地や建物や証券が共有状態になることで、有効活用するのが困難になる点にありました。共有状態となることで、双方の合意がなされなければ、売却や譲渡が行えなくなり、有効活用が困難になる事例が存在しました。
そこで、遺留分制度が見直され、遺留分の請求は金銭債権に一本化されました。
制度が見直されたため、先程のケースでは、娘が息子に請求できるのは現金だけになっています。
この改正に伴い、「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害請求」と呼び名が変更されました。
請求できるのが金銭だけになったことにより、土地や建物などが共有状態にならず、有効活用が容易になった点が改正の大きなポイントです。
遺留分の請求をされた際、支払いのための金銭の準備が難しい事情にある場合は裁判所に申し立てを行い、一定期間の猶予を受けることが可能となっています。
まとめ
- 遺留分とは法定相続人のうち、配偶者、子、直系尊属のみに認められている相続分の最低保証枠のこと
- 改正により、遺留分の請求は金銭請求のみになった
- 支払いが難しい場合は、裁判所に猶予の申立が可能
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