繰延資産の概要と注意点について
繰延資産とは
繰延資産とは、すでに発生または支払いが済んでいる支出のうち、年度をまたいで費用化することが認められる支出のことを言います。
出費自体は一時的であるものの、長期にわたって継続して効果を得ることが可能な支出を、資産として計上し、数年かけて償却することで費用化します。貸借対照表では、流動資産の下に記載されます。
繰延資産の種類
繰延資産には、会計上の繰延資産と税法上の繰延資産があります。
会計上の繰延資産
会計上の繰延資産は、企業会計原則などの会計基準に基づき、以下の5種類に分類されています。
設立費
事務所の契約費用、定款作成費など、会社設立のために支出した費用
開業費
広告宣伝費や建物などの賃借料など、開業準備にかかった費用
株式発行費
金融機関・証券会社の取扱手数料など、株式交付のために支出した費用
社債発行費
金融機関・証券会社の取扱手数料など、社債発行のために支出した費用
開発費
新技術や新経営組織の採用、生産効率の向上などで設備の大規模な配置換えを行った場合の費用など
会計上の繰延資産は、償却期間がそれぞれ異なります。
設立費・開業費・開発費は5年、株式発行費は3年、社債発行費は社債償還期間となっています。
税法上の繰延資産
税法上の繰延資産は、以下のものです。
- 自己が便益を受ける公共的施設や共同的施設の設置あるいは改良のための費用
- 役務の提供を受けるために必要な権利金その他の費用
- 資産を賃貸するか使用するために必要な権利金、立退料その他の費用
- 製品等の広告宣伝用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
- その他の便益を受けるために必要とされる費用
上記が税法上の繰延資産に当たります。
繰延資産の注意点
繰延資産は、貸借対照表では資産として計上されていますが、実際に何かが存在しているわけではありません。すでに発生している支出の費用化を先延ばしているだけの価値と捉えることもできます。「資産」という言葉のイメージに捉われすぎないように注意しましょう。
また、多額の繰延資産計上は正確な会計処理とは言えない場合があります。注意しましょう。
まとめ
- 繰延資産とは、すでに発生または支払いが済んでいる支出のうち、年度をまたいで費用化することが認められる支出のこと
- 会計上と税法上で繰延資産は異なる
- 償却期間の違いにも注意が必要
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